簡単!歯科医院の予防抗菌薬まとめ!普通の抜歯に抗菌薬は不要

安全な出産、がん治療を耐性菌から守るため、やめよう、フロモックス、メイアクト、セフゾン、トミロン、バナン!

今回も、インフェクションコントロールドクターの筆者が、「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン(以下、ガイドライン)」をもとに、思い切って超簡単に、歯科医院で使う予防抗菌薬の処方例をまとめました。

1. 歯科用インプラント埋入手術

推奨抗菌薬

アモキシシリン(サワシリン®️、パセトシン®️、アモリン®️)経口1回1g 注1

代替薬

ペニシリンアレルギーではアモキシシリンの代替薬として、

クリンダマイシン(ダラシン®️)経口1回300mg 注2

投与期間 手術1時間前の単回投与
  • 注1)コクラン・ライブラリー(Esposito M, 2013)では、2g 単回投与を推奨しているが、ガイドラインでは、1回250mg〜1g単回を推奨している。
  • 注2)クリンダマイシンの投与量は、ガイドラインには記載されていないが、「予防抗菌薬であっても治療量を用いる」のが予防抗菌薬の原則なので、筆者は、150〜600mgと考えている。コクラン・ライブラリー(Esposito M, 2013)では、感染性心内膜炎の予防抗菌薬と同量のアモキシシリン2gを推奨していることから、クリンダマイシンも感染性心内膜炎での推奨量の600mgでも妥当なのかもしれない。

2. 下顎埋伏智歯抜歯術

推奨抗菌薬

アモキシシリン(サワシリン®️、パセトシン®️、アモリン®️)経口1回250mg~1g

代替薬

ペニシリンアレルギーではアモキシシリンの代替薬として、

クリンダマイシン(ダラシン®️)経口1回150〜300mg

投与期間  手術1時間前から服用し、単回〜術後48時間 注3
  • 注3)ガイドラインによれば、「骨削除など侵襲の大きな場合や高度な術中汚染を認めた場合は」術後48時間の投与も考慮するとのこと。
    もっとも、術後感染症は、術中の細菌汚染が主な原因であり,手術終了後数時間適切な抗菌薬の濃度が維持されれば、術後の投与は必要がないとする報告が多いので、術後ダラダラ抗菌薬を続けることには注意。手術開始時点で感染がある場合は、予防抗菌薬ではなく、治療抗菌薬の使用法となる。予防と治療は区別しよう!

3. 感染性心内膜炎の高リスク患者の抜歯

推奨抗菌薬

アモキシシリン(サワシリン®️、パセトシン®️、アモリン®️)1回2g

代替薬1

ペニシリンアレルギーではアモキシシリンの代替薬として、
クリンダマイシン(ダラシン®️)1回600mg

代替薬2

ペニシリンアレルギーで、かつクリンダマイシンが使えない場合、
アジスロマイシン(ジスロマック®️)1回500mg

投与期間  手術1時間前の単回
  • 感染性心内膜炎の高リスク症例は、下記。なお、米国心臓協会(AHA)ガイドラインでは、予防抗菌薬の投与対象をもっと限定している。
  • <感染性心内膜炎の高リスク症例>
    • 生体弁・人工弁置換患者
    • 感染性心内膜炎の既往を有する患者
    • 複雑性チアノーゼ性先天性心疾患の患者
      (単心室、完全大血管転位、ファ ロー四徴症)
    • 体循環系と肺循環系の短絡増設術を実施した患者
    • ほとんどの先天性心疾患を有する患者
    • 後天性弁膜症(リウマチ性弁膜症など)
    • 閉塞性肥大型心筋症を有する患者

4. SSI高リスク患者の抜歯

手術部位感染(SSI)高リスク患者 4では、予防抗菌薬が推奨されました。

推奨抗菌薬

アモキシシリン(サワシリン®️、パセトシン®️、アモリン®️)経口1回250mg~1g

代替薬

ペニシリンアレルギーではアモキシシリンの代替薬として、

クリンダマイシン(ダラシン®️)経口1回150〜300mg

投与期間  手術1時間前から服用し、単回〜術後48時間
  • 注4)ガイドラインで定義しているSSI 高リスク因子は、歯科医院では、簡単に以下のいずれかに該当する場合と考えてOK:
    • 米国麻酔学会術前状態分類(ASA-PS)≧3、つまり、日常生活を妨げる重症の全身疾患がある患者(重度の糖尿病など)
    • BMI≧25、つまり普通体重以上の体重!
    • ステロイド・免疫抑制剤の使用
    • 術野に対する術前放射線照射
    • 高齢者(年齢に関しては症例ごとに評価)

5. 心内膜炎やSSIのリスク因子のない抜歯

推奨抗菌薬 なし

リスク因子のない患者の普通の抜歯に、予防抗菌薬の使用は推奨されていない!

抗菌薬の延期処方

歯科医師は、抗菌薬の明らかな適応がない場合、すぐに抗菌薬を処方はせず、患者には再評価が必要なことを伝え、経過をフォローすることでリスクヘッジするようにしよう!経過が思わしくない場合には、抗菌薬を処方しよう(抗菌薬の延期処方)。

再診について、具体的な指示をしてさえいれば、大きな問題にはなりません。逆に、何となく処方した抗菌薬こそ、重大な副作用を起こすことがあります。

患者の皆さんは、地域医療の安全を耐性菌から守るため、自分から抗菌薬を求めることをやめましょう!

参考文献

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歯太郎

歯太郎

歯科医師、歯学博士(骨分野)、口腔外科認定医、インフェクションコントロールドクター、ブロガー、そして二児の父。