感染性心内膜炎が、予防抗菌薬の中止勧告で、増加(英)

感染性心内膜炎のリスクの高い患者さんに、予防抗菌薬を使っていますか?

英国では、2008年のガイドラインで、感染性心内膜炎の予防抗菌薬を完全に中止する勧告を出しましたが、この勧告後、感染性心内膜炎の発生率が増加していたことが明らかになり、「Lancet」に発表されました。

感染性心内膜炎とは?

感染性心内膜炎は、心臓に微生物が感染し、菌血症や血管塞栓などを起こす敗血症のひとつです。発症率こそ低いものの、死亡率も合併症のリスクも高い、恐ろしい疾患です。

歯科処置前の予防抗菌薬

感染性心内膜炎の約40%は、口腔内の常在菌、ビリダンス型レンサ球菌によって発生します。そのため長い間、世界的に、感染性心内膜炎のリスクが高い患者さんには、侵襲的な歯科処置の前に、抗菌薬の予防投与が行われてきました。

しかし、実際のところ、その効果を確かめる研究は行われておらず、科学的な根拠はほとんどありませんでした。

そこで近年、欧米では、予防抗菌薬の投与に関するガイドラインを改訂し、予防投与を推奨する対象患者さんをしぼっていましたが、ついに英国では、2008年のNICEのガイドラインで、予防抗菌薬の完全中止を勧告したのでした。

感染性心内膜炎への予防抗菌薬を中止すべきとした英国NICE勧告の影響を調査(Lancet)

論文ななめ読み

感染性心内膜炎を発生するリスクがある患者さんには、侵襲的な歯科治療の前に、抗菌薬の予防投与が行われてきたが、英国では2008年のガイドラインで、感染性心内膜炎の予防抗菌薬を完全に中止する勧告を出した。

しかし、この勧告以降、英国では、予防抗菌薬(歯科の9割はアモキシシリン)の投与は減少したが、感染性心内膜炎の発生率は、有意に増加(1か月に1000万人当たり、0.11ケースの増加)していたことが、後ろ向き研究の結果で示された。

感染性心内膜炎の発生率は、ハイリスクの患者さんでもローリスクの患者さんでも、有意に増加していた。

原著論文はこちら

Dayer MJ, et al. Lancet. 2015 Mar 28;385(9974):1219-28.

編集後記

感染性心内膜炎は、発生率こそ低い(年間100万人に数十人と言われる)ですが、死に至ることもある全身性の感染症です。

予防抗菌薬の有効性を示す科学的根拠はこれまでほとんどありませんでしたが、今回のLancet誌の報告で、予防抗菌薬の一定の意義が見いだされました。

しかし、歯科で第一選択となっているペニシリン(アモキシシリン)については、アナフィラキシーの発生率が100万人に数十人と言われており、予防抗菌薬そのもののリスクも常に同時に考慮しておかなければなりません。

現状では、日本のガイドラインに沿って、予防が妥当とされるケースでは、予防抗菌薬を使った方が良さそうです。

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歯太郎

歯太郎

歯科医師、歯学博士、口腔外科認定医、インフェクションコントロールドクター、そして息子たちのパパ。