歯痛、抜歯後の痛みにロキソニンばかりでいいの?カロナール1000mg最強説

歯痛や抜歯後の痛みに、歯科で処方される痛み止めには、主にNSAIDsとアセトアミノフェンがあります。ロキソニン®はNSAIDs、カロナール®はアセトアミノフェンです。

今回は、虫歯から口腔がんまで、痛みの緩和に奔走してきた筆者が、「カロナール®

最強説」について簡単に解説します。

日本では大人気なNSAIDs

歯科でもっとも使われる鎮痛薬は、NSAIDs(エヌセイズ:非ステロイド性抗炎症薬)です。NSAIDsの中でも、ロキソニン®(ロキソプロフェンナトリウム)とボルタレン®(ジクロフェナクナトリウム)は、特によく使われています。

※以下、文脈上明らかな場合、「®」は省略

ロキソニン

歯科に限らず、日本では鎮痛薬の80%をNSAIDsが占めますが、米国や欧州では20〜30%でしかありません。なぜでしょうか?

NSAIDsの抗炎症作用と副作用

NSAIDsは、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、プロスタグランジン類の合成を抑制します。特にプロスタグランジンE2(起炎物質・発痛増強物質)の合成抑制によって、優れた鎮痛・解熱・抗炎症作用を発揮します。

しかし、同時に、痛みとは全く関係ない場所、例えば胃や腎などで働くプロスタグランジンの生成も抑制するため、消化器系障害、腎障害、皮疹、NSAIDs過敏症、止血阻害などの副作用もみられます。

消化器系障害

消化器系障害の予防のため、防御因子増強剤、H2ブロッカー、プロトンポンプインヒビター(PPI)などの消化性潰瘍剤の併用が推奨されていますが、保険上の制約から、これらの薬剤を歯科医院で処方するのは困難です。

ロキソニン®と似た市販薬

市販の鎮痛薬は、その多くがNSAIDsです。歯科医院でよく処方されるロキソニン®と似た市販薬を以下に示します(ボルタレン®と似た市販の飲み薬は、現在のところありません)。

ロキソニン®の有効成分ロキソプロフェンナトリウム(LXP)を含む市販薬

  • ロキソニンS
    =LXP 60mg
  • ロキソニンSプラス
    =LXP 60mg +胃粘膜保護作用を目的に酸化マグネシウム33.3mg
  • ロキソニンSプラミアム
    =2錠中:LXP 60mg +催眠鎮静作用を目的にアリルイソプロピルアセチル尿素60mg + 鎮痛補助作用を目的に無水カフェイン50mg + 胃粘膜保護作用を目的にメタケイ酸アルミン酸マグネシウム100mg
  • バファリンEX
    =LXP 60mg + 胃粘膜保護を目的に乾燥水酸化アルミニウムゲル120mg
  • コルゲンコーワ鎮痛解熱LXa
    =LXP 60mg +抗炎症作用を目的にトラネキサム酸140mg
  • その他、ハリー解熱鎮痛薬L、メディペインS、ユニペインL、エキセドリンLOX、ピタリノールLX、スカイブブロンLX、ロキベール、ロキソプロフェン、ロキソプロフェン錠「クニヒロ」、ロキソプロフェンソフトカプセル「BMD」など
    =LXP 60mg

世界の第一選択薬アセトアミノフェン

アセトアミノフェンは、その安全性の高さから、WHOではエッセンシャル・ドラッグ、つまり必要最低限欠くことはできない薬の一つとされ、世界的には各国の様々なガイドラインで第一選択の鎮痛薬とされています(がん疼痛、関節痛、老年医学分野など)。

アセトアミノフェンの解熱・鎮痛作用

アセトアミノフェンには、解熱・鎮痛作用があります。NSAIDsと同様にCOXを阻害しますが、その作用は弱いため、抗炎症作用はほとんどありません。そのためNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)には分類されません。

アセトアミノフェンは、中枢神経におけるCOX阻害に加えて、カンナビノイド受容体やセロトニンを介した下行性抑制系を活性化することで、鎮痛作用をもたらすと考えられていますが、その作用機序については、よく分かっていません。

少ない副作用

アセトアミノフェンには、NSAIDsのような胃腸障害や腎障害の副作用はありません。

また、以前はアスピリン喘息と呼ばれていたNSAIDs過敏症は、COX-1阻害作用によって症状が誘発されるため、多くの患者さんでは、アセトアミノフェンは安全に使用できます(COX-2阻害薬も同様に使用可)。

ただし、肝障害には注意が必要です。肝障害のある患者には慎重に投与することが勧められています。

1回1000mg、1日4000mg

これまで日本では、アセトアミノフェンの承認容量が諸外国に比べ少なかったのですが、2011年から、1回1000 mg まで、1日4000 mg までという諸外国同様の水準に拡大され、鎮痛効果を得やすくなりました。

抜歯後の痛み、カロナール®最強説

親知らずの抜歯など、抜歯後の痛みに対する鎮痛薬の効き目についての複数の研究を、思い切って簡単にまとめると、アセトアミノフェンのカロナール®、 NSAIDsのロピオン®静注、ロキソニン®の鎮痛効果は以下のようになります(村山、2009;郡司ら2009)。

<鎮痛効果>

ロピオン®静注50mg ≒ カロナール®1000mg
≧ ロキソニン®60mg ≧ カロナール®500mg
 

親知らずの抜歯のように炎症が強い、かなり強い痛みにもアセトアミノフェンは十分に効くんです!

アセトアミノフェンの市販薬

  • タイレノール®A
    =アセトアミノフェン300mg

※1回300mgでは、強い痛みに対する十分な鎮痛効果は得られないかもしれない。米国のタイレノールは1回1000mg、1日4000mgまで使えるようになっている。

即効性と持続性

鎮痛薬の即効性と持続性を考える上で、最高血中濃度到達時間(Tmax)と半減期(血中濃度が半分になるまでの時間)を知っておくのは重要です。

カロナール®、ロキソニン®、ボルタレン®の Tmaxと半減期は下のようになります。

  1. カロナール(Tmax:0.46時間、半減期:2.36時間)
  2. ロキソニン(Tmax:0.79時間、半減期:1.31時間)
  3. ボルタレン(Tmax:2.72時間、半減期:1.2時間)

カロナールは、短時間で血中濃度が高まるため即効性が高く、半減期が長いため持続性もあるという優れた特徴を持っています!

持続的な痛みには定時投与

抜歯などの術後痛のように、あらかじめ予期される持続的な痛みには、痛みが出てから鎮痛薬を使うという「頓用」方式はやめたほうがいいです。

持続性のある痛みには、時刻を決めて一定の間隔で「定期・定時」使用するのが有効です。

強い痛みにレスキューの併用

レスキュー(レスキュー・ドーズ)とは、痛みが強い時に、定時薬に臨時追加する鎮痛薬のことです(主にがん性疼痛に、オピオイドを使う時に必要な考え方)。

がん性疼痛では、NSAIDsとアセトアミノフェンとを併用することがあります。軽度の痛みに対し 1日2400〜4000 mgのアセ トアミノフェンを使用し、痛みが強い時、レスキューとしてNSAIDs を「頓用」で併用する、などの使用法もあります。

ですから、例えば、腰痛などで、既にNSAIDsを常用している患者さんの抜歯をした場合などに、歯科医師が「頓用」でカロナールを処方するのは、「あり」です。

<注意> 市販薬タイレノールの使用上の注意には、「本剤を服用している間は、次のいずれの医薬品も服用しないでください 他の解熱鎮痛薬、かぜ薬、鎮静薬」とありますので、ご注意ください。

カロナール®最強説まとめ

  1. NSAIDsと比較して、安全性が高い
  2. 十分量では鎮痛効果も非常に高い
  3. そして即効性がある
  4. かつ持続性もある
  5. したがって、世界的には第一選択の鎮痛薬である

参考

・村山剛ら:下顎埋伏智歯抜去後の術後痛に対するアセトアミノフェン(カロナール)の先制鎮痛効果、歯薬療法、2009

・郡司敦子ら:古くて新しい鎮痛薬アセトアミノフェン、歯薬療法、2009

・甲斐健太郎ら:アセトアミノフェン鎮痛目的利用の国内外差およびその普及による薬剤費低減の可能性、Jpn J Pharmacoepidemiol, 17(2) Dec 2012:75

・日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン作成委員 会.がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2010 年版.金原出版,2010

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歯痛ブック編集長、歯科医師、歯学博士、口腔外科認定医、ICD(インフェクションコントロールドクター)、そして父。#働き方 #テクノロジー #電動歯ブラシ #抗菌薬 に興味があります。趣味はリツイート。